パル日記

2015.01.28

冬のがん学会に行ってきました

先週週末、お休みをいただいて宮本先生と一緒に大阪で開催された冬のがん学会に参加してきました。 会場は大阪城の近くです! ちょうど大阪国際女子マラソンが開催されてました。 usslmsvu                                           5l6rbqvg 今回のメインテーマは副腎腫瘍。
腎臓の横にある副腎というホルモンを出す臓器の腫瘍です。
脳下垂体の良性腫瘍から副腎が大きくなるクッシング症候群という病気はワンちゃんではとても多い病気ですが、副腎そのものががん化する副腎腫瘍はとても珍しい疾患です。
この病気の困ったところは、

①初期は(場合によっては末期に近くなるまで)全くの無症状なので、エコーやCTなどの画像診断でしかわからない。 健康診断のエコーで偶然発見されることも多いそうです。
②いったん症状がでると、腫瘍からの出血、高血圧、それに伴う心臓病、全身の血栓塞栓症、高カリウムによる虚脱など重篤な状態に陥る。
③血管が大好きで、腫瘍の周りに20本以上細かな血管がまとわりついたり、副腎腫瘍自体が後大静脈のなかに潜り込んでしまうことが多い。
④以上のような特徴から、手術が大変。そしてそれ以上に手術前、中、後の全身管理が普通の疾患の何倍も必要になってくる、というハードな腫瘍です。

現在の所、世界的にも、日本でいちばんこの腫瘍を摘出したことのある先生でも周術期死亡率やなんらかの障害がでる可能性はとても高く、5頭に1頭は術後の予後は悪いといわれています。
ただし、何故か術後、抜糸まで乗り切ったワンちゃんの予後はとてもよく、もともと老齢(8歳以上)の大型犬での発生が多いがんですが、平均でも3年近く、寿命をまっとうできるぐらい頑張ることができるそうです。 下の画像は教科書からとってきた、静脈の中に入り込んでしまった副腎腫瘍です(青矢印) Rは右の腎臓、Lは左の腎臓です。 kdnb8a9s この後大静脈に入ってしまった腫瘍はどうやって取り除くのかというと….. 血管を上と下で遮断して、その間に血管を切り開いて中の腫瘍を引き抜いて、トータル8分以内に血管を縫い合わせて血流を再開!しなければなりません{#emotions_dlg.112}
こんな副腎腫瘍がメインテーマだったせいか、今回は腫瘍外科の先生方がとても多く、ほかにも目の腫瘍や、肛門アポクリン腺癌の外科、人工肛門(ストーマ)の講義などもありました。
人工肛門は、人間では大腸がんの方で一般的な治療です。
そして人間と同じように、小型犬でも人間のストーマセットを使って衛生的な排便のケアできます。

この講義でとても興味深かったのは、海外ではワンちゃんの人工肛門(ストーマ)はあまり飼い主さんの評判がよくないのですが、日本ではとても飼い主さんの満足度が高いそうです。
最後までペットに寄り添っていきたい、細やかな看護が得意な日本人らしいなと思いました。
蛇足ですが、がん学会の講義の先生方も何人かインフルエンザで倒れられてピンチヒッターの先生が頑張られていました。
今、福岡県山口県で大流行しているようですね。 皆様、くれぐれもお気を付け下さい。
ちなみにフルサワは13年くらい前に1回かかって以来、インフルにはなってません。 もともと扁桃腺とケガ以外あまり病気しない方なのですが、去年予防注射を受けに行ったとき、そこの電子カルテに記載されていた私の来院理由がここ7年ぐらい予防注射のみなのをみて、自分、丈夫だな…..と思いました{#emotions_dlg.098}

フルフル