パル日記

2015.08.15

尿道皮膚瘻(・。・;

男の子の猫ちゃんにとって、尿道の疾患は一大事です(>_<)

おちんちんに結石や炎症物質が栓のように詰まってしまい、どんなにきばってもおしっこが出なくなってしまうのです。このつらい状態が24時間以上続くと、膀胱だけでなく、その上流の尿管や腎臓まで障害をうけて致死的な状態へと陥ることもあります。

ほとんどの子は尿道に細い管(カテーテル)を通してもらってつまりを解除し、膀胱炎予防フードをきっちり食べさせてもらうことで落ち着くことが多いのです。

でも、まれに、まったく尿道のつまりが解除できない重症さんに遭遇することがあります(ー_ー)!!

その場合は私のいちばん好きな手術、会陰尿道瘻形成術(つまりおちんちん切って、女の子の広い尿道のように形成してあげる手術)を行うことが多いです。会陰尿道瘻はもとの尿道口の位置とほぼ同じところに出口を形成してあげる事ができるので、猫ちゃんも飼い主さんも一番違和感のない術式です。
つい最近、9年前にこの手術をした方が来院されてました。もうすぐ15歳の子ですが毎日快適にトイレできていると嬉しいお言葉を頂きましたヽ(^o^)丿

でも人生そんなに上手くいかないこともあります。
今回の患者さんがまさにそれ。
せっかく知り合いの先生からご紹介いただいて手術してみたら尿道周囲にひどい炎症と壊死があり、尿道も骨盤付近まで癒着して見当たらない……それでも一縷の希望をもって会陰尿道瘻してみたけどだめだった……という自分にとってはかなりショックな出来事でした。

手術前。おちんちんがパンパンに腫れ上がって細い3Frのカテーテルも通りません(>_<)

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開けてみるともっとびっくり。
おちんちんの左側はまだましなのですが、右側は、大事な皮下組織が白く硬く変性してしまっています。

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白く変性してしまった悪い組織には血流が無いので、縫ってあげても壊死してくっつかないのです。
悪い組織をできるだ除去してなんとか会陰尿道瘻をしました。外観だけはきれいですね…..

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結果は最初にお話ししたとうりです(>_<)
一時はカテーテルはずして自力排尿できるまでになっていたのですが、時の経過とともに尿道の周囲からじわじわとよくない状態になってきました。

飼い主さんには、まだとても若い子だし、できるだけ自然な排尿ルートを残してあげたいので会陰尿道瘻にチャレンジしたけど、最初のひどい状態から、もしかしたらこの尿道は周囲から壊死してしまうかもしれない、と手術したその日にお話ししてご理解いただいていたので、後日、尿道口を腹部に開口させる尿道皮膚瘻を行いました。

尿道皮膚瘻は下腹部の皮膚と尿道をつなぐ手術です。
尿道括約筋がまだ障害されていない子では、手術していない子と同じようにおしっこしたくなったら自力でトイレでチーと排尿できます。
ただし、おしっこが出るのがお腹なので、皮膚におしっこが付いたらふいてあげたり、皮膚の尿やけに注意しないといけません。

尿道皮膚瘻の手術後すぐにこの子は退院してご自宅で経過をみていただいていました。
通院の時に様子を聞いてみたところ、排尿はちゃんと砂のトイレでしていて、以前とまったく変わらない生活をおくれています。もうひとりの猫ちゃんと仲良く追っかけっこして高いところにふたりで登って遊んでます、とのことでした。

下の画像で説明すると、赤い矢印のところからおしっこがでます。

図1

ちなみにこの尿道皮膚瘻は、会陰尿道瘻にくらべるとびっくりするほど簡単です。やせている猫ちゃんでは短時間で手術が終わります。太ってる子は皮下脂肪が多すぎて大変ですが….

(余談ですが)まったくもって個人的な見解なのですが、膀胱炎になるのはなんとなく茶トラの猫ちゃんが多いような気がします。そして茶トラの雄といえばだいたい甘えんぼさん。

今回の子は最初はシャーシャー威嚇してきて、紹介してくださった先生の病院でも鎮静剤なしにはとても検査できない子で、術後も猫パンチ猫キック防止の為に手袋と靴下をはかせてガードしていたのですが、
『多分、茶トラだからそのうちなつくよ…..』
と見守っていたら入院途中からはんぱない甘え猫に豹変しました(^。^)

手術直後の若干警戒している画像がこちら。
逃げないようにタオルぐるぐる巻きで主治医が保定してます。

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そしてものすごく甘えん坊に豹変後がこちら。
ドア開けても逃げたりおびえたりしないで、触ってくださいおねだりしてます。

クッキー顔写真IMG_6474

 

退院時には普通にシャンプーさせてくれるぐらいなついたので、この子が病院嫌いなことをよく知っていらっしゃる飼い主さんは『こんなに病院好きになったの!』とすごく驚かれてました。

フルフル