パル日記
肝臓 尾状葉のがん
予告宣告どうり、肝臓がんを外科摘出したわんちゃんです。
獣医師会で症例報告させていただいた子です
2.1kgの10歳のマルチーズの女の子。たいへん小柄な可愛い子です。
ちょうどうちの柊の半分の体重ですね。
セカンドオピニオンで来院されて、エコーで診て腫瘍が大きすぎてどの内臓から発生したものやら…..ということで、CTを撮りに行きました。
これはエコーの画像。
お腹の中央に約5センチのしこりがあります。
この時点では肝臓か副腎の腫瘍かな?というところでした。
中央に大きな塊が見えるのがお分かりですか?肝臓尾状葉乳頭突起のがんです
尾状葉というのは肝臓の中でも最も奥深くに位置しています。
下の肝臓模型で赤丸でかこっているところが尾状葉乳頭突起です。内側左葉や胆嚢、方形葉をぺろんとめくった奥に見えます。
なおかつ大事な動脈や後大静脈、門脈に近く、手術するのは大変悩ましい場所です。
ですが、この時この子はこの巨大ながんのためにコントロールできない低血糖を起こしていて、静脈から常にグルコースを点滴してあげないとふらつき、虚脱がおさまらず、命に係わる状態でした。
手術でがんを取り除いて低血糖が治らないと退院もできない状態だったのです。
そういうわけで手術に踏み切ることになりました。
こういうヘビーな手術の時は輸血も含めていろいろ前準備しますが、ちょっと今回は①頬粘膜出血時間の測定②観血血圧測定(動脈血圧)もしてもらったのでお見せします。
これが頬粘膜出血時間の測定
頬の粘膜を、ヒトの赤ちゃんの血液型を調べるときに使うカッターでちょっと切って何秒で自然に血が止まるかをカウントします。、血液検査では検出限界のある、血液の止まる能力を測定しています。今回は幸い正常でした!
観血血圧測定のための動脈留置を足首の動脈に入れてもらってるところです。
人の医療ドラマなんかでは手首によく入れてますね。動脈圧をダイレクトに測定できるので術中の血圧の変動に素早く気づいて対処することができます。
でも小さい子にいれるのは大変なんです…….
術中のモニターではこんな感じです。ダークブルーの数値が動脈血圧です。
と、いろいろ下準備が済んだところでいよいよ手術です。
注意!!血が苦手な方は画像をクリックしないでください
お腹を開けるとどーんとがんが出てきました。右下に赤黒く見えています。右上に正常肝臓がちょっと顔をのぞかせています。大きさも色合いもがんと正常組織では全然違うのがわかると思います。ここまでがんが大きくなると、隣接する十二指腸やすい臓が癒着してるので、それらをていねいにはがしていきます。
病理検査では肝細胞癌 巨大細胞型(massive type)でした。
このがんは手術による摘出後の予後が大変良く、逆に手術しなかったわんちゃんの方がした子よりも15.4倍死亡率が高いという特徴を持っています。おそらく、今回のわんちゃんのように、がんが大きくなってしまったことによる低血糖やがんからの出血、がんの他の臓器への圧迫などがあるからでしょう。
術後は定期的にエコ
ーで検診させていただいていますが、6カ月経過した今も再発もなくとても元気に来院してくださってます
ふるふる
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